インフルエンザについて

かぜ(感冒)のなかでも、冬季に流行する全身症状の強いものはインフルエンザウイルスが原因でおこることが多く、普通感冒とはいろいろな点で異なります。

かつて1743年に、ヨーロッパで大流行した全身症状が強く多数の死者をだしたかぜがインフルエンザと名付けられました(インフルエンザInfluenzaとはイタリア語で’同時に多くの人を襲う災厄’という意味)。近年になってインフルエンザを起こす原因がウイルスであることがわかり、そのウイルスをインフルエンザウイルスと呼ぶようになりました。

日本においても、殆ど毎年のように1月、2月を中心に大流行しています。

症状としては、通常のかぜと異なり、全身症状が強いのが特徴です。突然、高熱(38ー40度)とともに、悪寒、頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感が出現します。それと同時か、1~2日遅れて鼻みず、くしゃみ、のどの痛み、せきなどの呼吸器症状も出てきます。時には食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状も出現します。下の図のように熱は通常3日程度で下がります(中にはいったん下がった熱が再度1~2日、上昇する例もあります)。呼吸器症状はその後も数日続き、合併症がなければ約一週間で治ってゆきます。

インフルエンザで問題となるのは合併症です。最も注意しなければならないのは肺炎です。今日でも高齢者ではインフルエンザ後の細菌感染による肺炎で死亡することが稀ではありません。発病して3~4日経過してもいっこうに熱が下がらなかったり、せき、たんがひどくなって、呼吸困難やくちびるが紫色になるチアノーゼが現れたり、胸痛が起こったりしたときには、肺炎を合併した可能性がありますので、専門医を受診して下さい。そのほかに心筋炎、心外膜炎などの心臓病、脳症やギランバレー症候群などと呼ばれる神経系の病気が合併することがあります。また、小児では中耳炎やクループ(別述)と呼ばれる急性の夜間の呼吸困難をよくおこしますので注意が必要です。

治療は抗ウイルス薬の内服と対症療法が主体となります。家庭で安静にして、保温、水分を十分に補給して下さい。

 

そのほかに気をつけていただきたい点として、

 

  • 解熱剤の使用に注意して下さい。

サリチル酸系の解熱剤(商品名 アスピリン、バファリン、ミニマックス)などはライ症候群を誘発する可能性がありますので、使用しないで下さい。ライ症候群とは子供だけに起こり、インフルエンザや水痘にかかってから、3~10日後に、嘔吐、意識障害、けいれん、肝障害などで死亡することがある病気です。

 

  • インフルエンザは感染力の強い病気です。

インフルエンザの潜伏期は1~2日程度、発症後約5日間は感染力があります。家庭内では20~40%の人にうつります。家庭内で患者が出た時は、できるだけ部屋を別にするとか、鼻みずや痰をとったちり紙は焼却するなどの対策が必要です。

また、学校伝染病第二種に指定されていますから、解熱後した後2日を経過するまで登校できません。

 

  • 予防接種について

インフルエンザワクチンは90%近い有効率があるため、接種することが望ましいです。ただし子供では、注射が2回必要であり、有効期間が3~6カ月程度であるため、毎年の接種が必要となる点に注意が必要です。