クループにおける注意点

クループ(急性喉頭気管気管支炎、もしくは声門下喉頭炎といいます)とは風邪に合併して、のど(喉頭、気管)の粘膜が腫れて気道が狭くなり呼吸困難を起こす病気のことです。風邪をひいている子供が、突然急激に犬が吠えるような咳、声がれとともに吸気性の呼吸困難をおこします。しかも、発作は夜間に出現することが多く、家族の方が大慌てすることも少なくありません。通常は3歳未満の幼児ですが、時にはそれ以上の年齢でもみられます。

では、なぜこの様な状態が出現するのでしょうか。鼻や口から吸い込んだ空気は喉頭から気管を通って肺に入ってゆきます。この気道のうち喉頭には声帯という2つの膜があり、これが閉じたり開いたりすることで、声を出したり食物が肺に入ることを防ぐような働きをしており、気道の中では最も狭い場所になっています。しかも子供では声帯に近い部分の気管の粘膜は未発達で脆弱なため、風邪などのウイルス感染にともなって容易に腫脹し、気道は更に狭くなって呼吸困難が出現します。

診断はファイバースコープという器械を使って、のどを上からのぞくとわかります。正常では下図(左)のように二枚の声帯の間からきれいな気管が認められます。クループになると下図(右)のように声帯の下に引き続いて、腫れた気管粘膜が確認できます。写真は4歳の子供の例です。気管の粘膜が赤く腫脹し、気管がかなり狭くなっていることが観察されます。

クループは風邪を引いた子供のほんの一部にしかみられませんし、クループにかかったとしても適切な治療をすれば数日で改善します。しかし、5%程度のケースでは呼吸困難が強く窒息する可能性があるため、入院の上、点滴や酸素吸入、時には気管切開が必要になることもあります。

夜間に突然、犬の吠えるような咳や、声がれ、吸気性の呼吸困難が出現した時にはこのクループであることが考えられます。そのような際には、子供を安静にして、最も呼吸のしやすい姿勢になるように手助けしてやって下さい。それとともに、室内の湿度を高め、水分を十分に与えて下さい。室内の湿度を高めるためには、浴槽に水を入れたうえで扉を開け放ったり、十分に濡らしたバスタオルを室内に掛けたりすることが有効です。ほとんどはこれで大丈夫ですが、眠れないほど呼吸困難が強いときや、鎖骨の上が陥没するような努力呼吸をしているときには、専門医の治療が望まれます。