慢性副鼻腔炎とは俗に’蓄膿(ちくのう)’と呼ばれている病気で、副鼻腔に細菌感染がおこり、膿が貯っている状態をいいます。
副鼻腔とは鼻(鼻腔)の周りにある空洞で細い通路で鼻腔につながっています。副鼻腔の働きははっきりとは分かっていませんが、鼻腔と共に呼吸に何らかの役にたっていると考えられています。副鼻腔の中には通常は空気しかはいっていません。
主な症状は鼻汁、鼻づまり、頭重感などです。鼻汁は濃い粘液性で鼻孔から前に出ることもありますが、のどの方へ流れて、痰の原因となることもよくあります。においがわかりにくくなることもあります。また中耳炎や気管支炎など周囲の臓器に膿が波及して、合併症をおこすことも少なくありません。更にこの病気があると精神的に落ち着かずイライラしがちとなり、物事に熱中できなくなったりもします。
急性の副鼻腔炎は、風邪などで細菌の感染が鼻腔から副鼻腔に及んでおこります。たいていは一時的なもので、やがて改善しますが、風邪の治療が不十分であったり、もともと鼻腔と副鼻腔の間の通路が狭かったりすると、慢性化します。親兄弟で顔の形が似るように、鼻の中の構造も似てきますから、蓄膿もしばしば家系的にみられます。
診断は鼻の中を観察すると副鼻腔との通路から膿が出ていたり、鼻茸が出来ていることでわかります。またレントゲン写真を取ると膿が貯っている副鼻腔は白く写ります。(下方の写真で、向かって右の白矢印で示した左上顎洞は正常で黒く写っているのに比し、向かって左の黒矢印で示した左上顎洞は真っ白でかなり膿が貯留していることがわかります。)
治療は貯っている膿を取り除くことと、再び貯らないように鼻腔と副鼻腔の間の通路をひろげてやることが目標となります。
そのためには手術的治療と手術をしないで治す保存的治療があります。最近ではほとんどの人が手術をしなくて治すことが出来るようになってきています。
保存的治療としては、局所療法と薬物療法があります。局所療法のうち、診療椅子に座って行っていることは、鼻腔を消毒し副鼻腔との通路を開いて、鼻腔や副鼻腔に貯った膿をできるだけ吸引除去しています。また、ネブライザーとは薬を細かい霧にして副鼻腔の奥深くまで到達するように工夫した治療法です。
飲み薬としては主として、消炎酵素剤といわれるものが用いられます。この薬は膿の粘度を下げると共に、鼻から外へ膿を送りだそうとする鼻の粘膜の働きを高める作用があります。
一方、昔に比べて少なくなったとはいえ、やはり手術的治療が必要なこともあります。一つは鼻茸や鼻中隔彎曲症などがあって、副鼻腔の通路が塞がれているとき。また、炎症の程度が強く目や脳に合併症が起こる可能性がある時。さらに、かなり長期間にわたって保存的加療を行ったにもかかわらず、よくならない場合などです。
副鼻腔炎の治療にあたって大切なことは
1)家庭において頻回に鼻をかむ習慣をつけること。
保存的治療として行っていることは、できるだけ鼻の中の膿を減らし、粘膜の腫れを少なくして、副鼻腔との通路を確保しようとしていることです。ですから、鼻をかむということは、家庭において出来る最大の治療法です。
2)飲み薬はかなり長期間定期的に服用して、はじめて効果の出るもの。
副鼻腔とは骨で囲まれた空洞で、もともと飲み薬が効きにくい性質があります。少なくとも3カ月程度服用してはじめて効果がでてきます。ときどき薬を飲んだり、飲まなかったりするのではまず効果は期待できません。副鼻腔炎に用いられる消炎酵素剤は子供にも殆ど副作用はないものと考えられており、服用するのならかなり根気強く服用することが望まれます。
3)風邪に注意
多くは風邪の治療が不十分なときに起こってきます。逆に、治っていても風邪がきっかけで再び悪くなることがあり注意が必要です。