先天性耳瘻孔とは

先天性耳瘻孔とは、胎児期の耳介ができあがる際に皮膚の一部がめくれ込んで、管状に残ったものです。約20人にひとりの割合で出現し、図1のように耳介前部に最もよくみられます。見かけ上は、表面に小さな穴があるだけですが、その下では細い穴がつながっており、時には枝別れしたり先端に袋があったりします。(図2)

 

ときどき穴から乳白色チーズ状の分泌物が出てきますが、痛みなどの他の症状はなく、細菌感染を起こさない限り、特に治療は必要ではありません。

 

しかし、いったん細菌感染を起こすと、その構造的特殊性のために、様々な問題がおこってきます。出口が狭いために膿が排出されずに管内に貯留し易いこと、また感染する細菌自体も嫌気性菌と呼ばれる比較的抗生物質が効きにくい菌であることが多いために、図3のように著明な腫脹(膿瘍形成)を来し同時に強い痛みを伴います。可能な限り出口よりの排膿を図るとともに全身的に抗生物質を投与します。

 

このような治療によって腫脹は改善しても、皮膚の下では大きな空洞を残すことが多く(図4)、更に感染し易くなり、腫脹自体も繰り返すたびに強くなります。

 

大切なことは、日頃から感染を起こさないように穴の周辺を清潔に保つことです。また、なかなか腫脹の軽減しないときや、何度も腫脹を繰り返すようであれば、管壁を含めた全摘出術が望まれます。