嗅覚障害の点鼻療法

においの神経は鼻の断面図でみると、鼻腔の上方(脳のすぐ下にあたる)の嗅上皮という部分にあります。息を吸ったときに、においの粒子がこの嗅上皮の部分に到達してはじめてにおいが分かります。

 

嗅覚障害は種々の原因で起こります。

① においの粒子が嗅上皮の部分に到達しない場合。例えば、ちくのう症(慢性副鼻腔炎)や鼻茸、鼻中隔弯曲症などがあって、鼻の中が狭かったり、鼻汁がたくさんある時など。

② 嗅上皮自体が障害を受けた場合。例えば、慢性鼻副鼻腔炎による炎症などが嗅上皮におよんだ時など。

③ 嗅上皮より奥の脳の中の神経が障害を受けた場合。例えば、頭を打撲したり、ウイルス性の風邪にかかった時などです。

 

点鼻療法とはこの嗅上皮に直接薬剤を到達させることによって、嗅覚障害を治療しようとする方法です。

 

点鼻の仕方

1)薬液を嗅上皮に到達さすためには姿勢が大切です。図のように肩の下に座布団や枕をおいて、頭を後屈させます。

2)薬液を左右の鼻孔に2、3滴ずつ滴下して、5分間そのままの姿勢を保った後、起き上がって鼻をかみます。

このような点鼻を起床時と就寝前の1日2回行います。

 

点鼻療法は嗅覚障害の最も効果的な治療法で、約7割の方に有効です。しかし、前述の原因のうち、①②では割合良く効きますが、③ではなかなか奏功しない傾向があります。また、におわなくなってからできるだけ早期に治療を始める方が治療効果が高く、6か月を過ぎると殆ど回復は望めません。

効果のある場合には、通常点鼻開始後2~4週間で徐々に嗅覚が回復してきますが、中にはそれよりもずっと遅れてにおい始める例もあります。ですから、少なくとも8週間程度は根気強く、点鼻を続ける必要があります。