かぜは最も一般的な病気で、健康な成人であっても一年に1度や2度くらいかかることは普通です。しかし、子供では特にその回数が多く、家族の方が心配することも少なくありません。
下(左)の表は、年齢別の日本人の一般的なかぜの年間罹患回数をあらわしています。ご覧のように1歳未満の乳児では約4回、1歳を過ぎて小学校にはいるまでは年間約6回、小学校に入ると罹患回数は減少して1ー2回となります。以後成人となってもかぜの罹患回数が増えることはありません。この値はあくまでも平均値ですから、もっと数多くかぜにかかる子供もたくさんいます。
かぜのほとんどはウイルスの感染によっておこります。ウイルスの感染症である流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)や麻疹(はしか)は一度かかると終生免疫が形成され、2度とかかることはありません。同じウイルス感染であるかぜはなぜなんどもかかるのでしょうか? それはかぜの原因となっているウイルスの種類がたくさんあるからです。
出生直後は母胎の免疫があり、かぜにはかかりにくい状態ですが、徐々に母胎からもらった免疫が消失してゆくとかぜにかかるようになります。やがて幼児期になって、外出するようになると、かぜのウイルスをもらいやすく(かかりやすく)なります。とくに託児所や保育所に通っている子供は、通っていない子供の2倍近くもかぜにかかりやすいといわれています。小学校に入学する頃には抵抗力もでき、また一通りのウイルスにさらされて免疫が形成され、風邪にかかる回数が減少します。ですから、幼児の頃に繰り返しかぜにかかるからといっても、ほとんどの場合には心配ありません。
しかし、まれには生まれつき免疫機構の形成が悪い子供がいます。このような子供ではかぜ以外にも、髄膜炎や敗血症など重篤な病気にかかり易い傾向があり、注意が必要です。目安としては乳児期であれば年11回以上、学童期であれば年6回以上かぜにかかるようなら、一度血液検査をすることが望まれます。
さて、家庭内においてひとりがかぜにかかると、次々に家族が伝染してゆき、最後には家族全滅ということもしばしば経験します。
下表(右下)の表は、家庭にかぜを持ち込んだ人(伝播者)とかぜをうつされた人(罹患者)の割合を成人と小児に分けて検討したものです。家庭内ではこどもから他の人へ感染する率が高いことがわかります。
右上の表は夫を1とした場合の、妻、学童(学校へ行っている子供)、乳幼児(学校へ行っていない子供)の伝播者および二次感染者になる率をあらわしたものです。家庭にかぜを持ち込む頻度の高いのは学童と妻であり、かぜをうつされる頻度の最も高いのは乳幼児ということになります。このことからも、家庭内ではおにいちゃんやおねえちゃんがかぜにかかると、つぎにはあかちゃんがかぜにかかるということを念頭において対処しなければなりません。