滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは鼓膜の内側(中耳)に液が貯って、聞こえが悪くなる病気です。大人には割合少なく、3ー8歳の子供によくみられます。症状は比較的軽い難聴だけです。 大人では耳のふさがった感じや重い感じを訴えることもありますが、子供では痛みや熱もないので気付かれないことが多いようです。

原因は耳管の働きが悪いためといわれています。耳は鼓膜によって、外耳と中耳に分けられており、通常は外耳から中耳に空気や細菌が入ることはありません。中耳は耳管という管で鼻の奥とつながっています。中耳には鼻からこの耳管を通って、空気の入れ替えが行われています(図1)。(健康な人ではあくびや唾を飲み込んだときに中耳に自然に空気が入る仕組みになっています。)

耳管がつまると中耳に新しい空気が入らなくなり、やがて中耳の空気も吸収されてなくなり、陰圧となって、代わりに周囲から滲出液が出てきてたまることとなります。耳管は体質的につまりやすい人もありますが、多くは鼻が悪かったり、扁桃やアデノイドが大きいことが誘因となっています。

診断は聴力検査で聞こえが悪いことと、鼓膜を見ると貯留液が透けて見えたり、中耳の陰圧のためにへこんでいたりすることで分かります。また中には顕微鏡でみたり、ポンプで圧を加えて鼓膜の運動の仕方を観察してはじめてわかる場合もあります。

図2は正常、図3は滲出性中耳炎の代表的な鼓膜です。中耳炎の鼓膜は、中耳の陰圧のためにへこんでおり、中に黄色い貯留液が透けて見えています。

治療は

  1. 貯っている液を抜くこと
  2. 中耳に空気を入れてやること
  3. 耳管の空気の通りを悪くしている原因の治療が必要です。

1)のためには、鼓膜切開、即ち鼓膜に小さな穴を開け中耳の液を吸引除去することを行います。2)のためにはゴム球や先の曲がった金属管を用いて鼻の耳管の入口より、空気を送り込んでやります(耳管通気)。このような方法を繰り返し行っても、空気が十分に入らず、液が貯留する場合には鼓膜にプラスチックのチューブを挿入し、外耳道から空気が入るようにすることもあります(鼓膜チューブ留置術)。それとともに3)耳管の空気の通りを悪くしている誘因の治療が大切です。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)があると膿が耳管の入口をただれさせ、ふさいでしまいます。またアデノイドがあると直接耳管の入口を圧迫します。これらに対して治療が必要となってきます。

痛くもなんともなく、子供の訴えが少ないからといって、滲出性中耳炎をそのままにしておくと、やがて貯留液が徐々に水飴のようにねばくなり、鼓膜の奥の壁にくっついてしまいます。そうなると聞こえが非常に悪くなり、また治療が困難になってきます(癒着性中耳炎)。

子供の滲出性中耳炎の大半は耳管の機能が改善してくる10歳前後より急速に快方にむかいます。しかしそれまでの間は、細菌感染によっておこる急性中耳炎とは異なり、かなり長期にわたる治療が必要です。通常数カ月、場合によっては何年もかかることがあります。その間一度の鼓膜切開で済むことは少なく、繰り返し切開が必要な場合が多いです。

滲出性中耳炎 図1
図1
滲出性中耳炎図2
図2
滲出性中耳炎E4D図3
図3