小児反復性耳下腺炎とは

耳下腺とは唾液を分泌する唾液腺の一種であり、食物のそしゃくや口内を清潔に保つために働いています。耳下腺は図のように両方の耳の下に存在し、数cmの細い管を介して口の中に出口が開いています。

反復性耳下腺炎とは別名:唾液管拡張症ともいい、先天的に耳下腺の形態に異常があり、それに口内の常在細菌が出口より逆行性に感染して、繰り返し耳下腺が腫脹する病気です。10歳未満の小児に多く、ことに6-8歳によくみられます。

症状は耳下腺の反復腫脹です。頻度は年に1-2回程度から、多い場合には毎月腫脹を繰り返す場合もあります。腫脹にともなって、痛み、開口障害、発熱などが出現します。痛みは唾液の分泌が促進される食事中に強くなるのが特徴です。そして、口腔内の耳下腺出口からしばしば膿の流出が観察されます。

耳下腺腫脹が出現した際には全身的に抗生剤を投与すると共に、皮膚の上からマッサージをして耳下腺に貯留した膿性唾液の排出を積極的に促してやります。口の中に開いた出口より、洗浄消毒することもあります。感染の反復をできるだけ少なくするためには、虫歯などの口腔内感染巣を除去し、日頃より歯磨き、うがいなどの口内を清潔にする習慣をつけることが大切です。これでも頻回な腫脹を繰り返す場合には、口内の菌に対する細菌ワクチン療法が行われます。

経過自体は良好で加齢とともに腫脹の頻度は少なくなり、かつ軽症となり、思春期を過ぎればほとんどの例が症状を認めなくなります。

この様に耳下腺の腫脹を来す疾患には、そのほかに流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、シェーグレン症候群(リウマチなどとおなじ自己免疫疾患)がありますが、病状によりおおむね区別が可能です。どうしても鑑別が出来ない場合には耳下腺の造影レントゲン撮影や血液検査を行うこともあります。

小児反復性耳下腺炎とは図1
図1