溶連菌感染症での注意事項

溶連菌【ようれんきん】とは溶血性連鎖球菌【ようけつせいれんさきゅうきん】(またはA群β連鎖球菌)のことで、猩紅熱【しょうこうねつ】や丹毒、扁桃炎、咽頭炎の原因となる細菌です。

咽頭炎や扁桃炎は様々なウイルスや細菌の感染によって起こりますが、そのうちの10%程度は溶連菌が原因です。溶連菌感染によるものは他の感染に比べて、のどの粘膜が真っ赤に腫れて、発熱や疼痛も高度になる傾向があります。しかし、抗生物質がよく効きますので、きちんと薬を飲めば症状は割合簡単に改善します。

ではなぜ溶連菌感染症が問題とされるのでしょうか。

それは溶連菌は他の細菌と異なって全身に影響を及ぼす可能性があるということです。すなわち、溶連菌の菌成分が血液と共に全身の臓器に流れ込むことによっていろいろな合併症が起こります。最も頻度が高いものは急性糸球体腎炎です(急性溶連菌感染後糸球体腎炎とよばれます)。最近はだいぶ頻度は少なくなったとはいえ、小児では現在でも入院が必要とされる代表的疾患です。とくに5才から10才前後の小児では合併症の頻度が高く、軽度のものまで含めると10数パーセントに何らかの腎機能障害が現れます。そのほかに、稀には心臓疾患の原因ともなります。

これらの合併症を予防するために以下のようなことに注意します。

  1. 溶連菌感染症およびその合併症が懸念されるときには細菌検査、血液検査、尿検査などが必要となります。
  2. 溶連菌による咽頭炎、扁桃炎が疑われるときには、たとえ数日で症状が治まったとしても、少しでも菌が体に残っている限り合併症を起こす危険があります。最低でも10日間は抗生物質の服用が必要です。腎炎は溶連菌に感染した後、のどの痛みや発熱が消失した1~2週間ごろに現れることが多く、油断してはなりません。
  3. 家族内感染の可能性がありますので、家族の方に同じような症状の人がないか注意してください。(流行期には兄弟の50%、両親の20%にうつると考えられています。) 必要に応じて、家族の方にも抗生物質の予防的投与を行います。